上杉周作

TOEFLの点数のインフォグラフィック

ネット上で知り合ったデザイナーさんのなかこちゃんに、TOEFLの点数のインフォグラフィックを作ってもらったので、みなさんにご覧頂きたい。

TOEFL 点数

きっかけ

ちょうど4ヶ月前、大阪府教育長の中原さんと夕食をご一緒する機会があった。失礼のないよう、彼について事前に調べさせてもらったところ、衆議院の予算委員会公聴会で、大学入試にTOEFLを盛り込むように彼が提言されている動画を見つけた。さらにネットをあさると、自民党の教育再生実行本部が「大学入試にTOEFL義務付けを」と首相に提言していることが分かった。最近では、楽天社長の三木谷さんも似たような発言をされている:

「まず最初のステップは『大学入試を変えること』です。私は内閣にも大学入試を変革すべきだと提案しました。大学入試という『ゴール』を変えれば、過程も変わると考えるからです。

日本国内だけで通用するテストではなく、より国際的で実用的な『役立つテスト』へと移行すべきです。具体的には翻訳と文法中心のテストから、例えばTOEFLのようなグローバルなテストに変更しようという提案です」

わたしは日本の英語教育に興味がないので、はじめは「あっそ」と思っていた。だがひょんなことで、7月に大阪の天王寺高校でアメリカへの留学について講演をすることになった。これはTOEFLについて少しは調べないとまずいと思い、過去のデータを眺めることにした。

過去のデータ

TOEFL iBTとは英語圏の大学に留学するために必要なテストで、英語を読む/聞く/話す/書く技術を問われる。それぞれ30点満点で、合計で120点満点だ。2012年の1年間に集められた公式データ(PDF)によると、

  • 男性の平均点は80点、女性の平均点は81点。
  • 日本語を母国語とする人の平均点は、読む=18点、聞く=17点、話す=17点、書く=18点、合計で70点。
  • 繰り返すが、120満点なので、70点/120点 = 58.3% である。日本の平均点は6割を切っているということだ。
  • アジアの各国の平均合計点: アフガニスタン72点、バングラデシュ84点、中国77点、香港82点、インド91点、インドネシア79点、北朝鮮80点、韓国84点、マレーシア89点、ミャンマー79点、フィリピン89点、シンガポール98点、台湾78点、タイ76点、ベトナム77点など。データがある30ヶ国のうち、日本の平均合計点(70点)はカンボジア、モンゴルの68点についでビリから3番目。

そして、一番興味深いのはこちらのデータだ。

  • 読みの平均点が日本(18点)より低いアジアの国は7ヶ国。書きの平均点(18点)はモンゴル、タジキスタンと並んでアジア最下位。

「日本人は英語の読み書きが得意だが、聞くのと話すのは苦手」とはよく言われる・・・気がする。しかし、上記のデータを見る限り、この仮説は裏付けできない。

それにしても「書き」の平均点がアジア最低というのは意外だったので、これは広く知られるべきではないかと考えた。タイミングのいいことに、なかこちゃんがインフォグラフィックについて勉強していたのを彼女のブログで見かけたので、「TOEFLのアジア諸国の平均点をインフォグラフィックにしてください」と頼んでみた。彼女はインフォグラフィックを作った経験は無かったが、二つ返事で快諾してくれた。

先ほど挙げた数字を踏まえた上でもう一度、インフォグラフィックを貼っておく。

TOEFL 点数

余談だが、北米の名門大学では足切りが100点以上と言われている。ハーバード大の公式サイトには、「TOEFLのiBTが109点未満の人はMBAを受けないほうがいい」と書かれている。しかも太字で。

The MBA Admissions Board discourages any candidate with a TOEFL score lower than 109 on the iBT…from applying.

わたしの点数と、ここでは触れないこと

これから考察に入るのだが、偉そうなことを言う前に、わたしの点数を晒すことにする。自分はiBT形式のTOEFLテストを受けたことがないが、12歳で渡米して5年後に大学受験のため旧式(300点満点)のTOEFLテストを受けた。8年も前になるので、何点を取ったか忘れたため、当時友達に送ったメールを掘りおこしてみた。

けっきょく、Essayが満点だったので300点中280点だった。公式の換算表によると、iBTでは114-115点になるらしい。それでもわたしが不服そうなのは、当時近所に住んでいた日本人の同級生たちが揃いも揃って満点近くを取っていたからだ。

もっとも、この頃はSATという遥かに難しい試験に必死だったので、TOEFLは全く勉強しなかった覚えがある。けれども、いまTOEFLのiBTを受けたら114-115点を取れる自信は全くない。現在渡米14年目にして、90点も取れるかどうか微妙だと思うくらい、自分の英語力は落ちてきている。情けない限りである。

ちなみに、自分が最近に書いた英語の長文はこちらこちらで読める。一ヶ月半ほど前にそれぞれ2000単語弱で書いた。

次に、わたしがここでは触れないことを三点説明する。

第一に、「日本人は英語ができない、ダメだ」と言うつもりは全くない。そもそもTOEFLというテストが正しく英語力を測れるとは思えない。テストというものは準備をすればするほど点数が上がるので、日本の平均的なTOEFL受験者は、アジア諸国の平均的な受験者と比べて、準備に費やす時間が単純に少ないだけなのだろう。もしくは、アジア諸国では国のトップ人材のみがTOEFLを受け、日本ではそうでもない人も多く受けている可能性だってある。そういった、日本の受験者像をあらわすデータは手元にない。

また、受験者の多くが、自分の留学先が求める点数を取れたら受験をやめる。その「求められる点数」が、日本は平均して低いだけかもしれない。たとえば先月、カナダのブリティッシュコロンビア大学(UBC)を見学しに行ったのだが、立命館大学の大学生はTOEFLで45点をとればUBCに短期留学できるらしい。この場合、45点まで点数をあげた瞬間、受験をやめればいいのである。それ以上の点数を取るインセンティブはない。こういうケースが多くなれば、平均点が70点なのも頷けるだろう。

第二に、「TOEFLを日本の大学入試にすべきか」という問いについては、わたしはノーコメントである。帰国子女にならなかったわたしは日本の大学を一校も受けたことがないため、コメントのしようがない。「TOEFLが大学入試化しそうなら、今のうちにTOEFLの塾を開くか、TOEFLを教えられる教師の確保ルートを作るか、英会話のベンチャーに投資しておけば儲かるんじゃない」くらいしか言うことがない。

第三に、三木谷さんも言うように、「アジア諸国に英語力で追い付くべきか」「日本の学生はもっと留学するべきか」という問いについても、わたしはノーコメントである。

わたしはカーネギーメロン大のコンピューターサイエンス学部と院を卒業したが、学部生の1割強は日本以外のアジアからの留学生だったと記憶している。みな賢かったが、わたしは日本の大学生と競争したことがないので、アジアからの留学生と比べて日本の大学生がどれくらい優っているか劣っているかは知る由もない。

また、わたしはアメリカの中学→高校→大学と進学したので、日本からアメリカに留学した覚えはないし、他の国の大学で勉強したこともない。つまり自分自身、留学経験がないガラパゴス人間なので何も言えないのだ。

わたしが言いたいこと

ではわたしが言いたいことは何かというと、次の二点である。

第一に、データを見よう、ということ。繰り返すが、2012年のデータでは、アジア各国と比較した場合、日本人の「書き」の平均点は最低である。「日本人は英語の読み書きができるが・・・」ということを言いたければ、それを部分的にでも客観的に裏付けられる数字を提示しよう。

付け加えておくと、今どきそういうことを言う人は少ないのかもしれない。「日本人 英語 読み書き」でググると、最初のヒットはヤフー知恵袋のこのページで、

日本人って英語は読み書きは人一倍できても会話となると全然ダメな人多いですよね?

という質問に対し、ベストアンサーには

日本人が読み書きが人一倍できるって、誰が言ったのでしょうか?私は、英語の読み書きができる日本人を、ほとんど見たことがありません。断っておきますが、読み書きができるというのは、ネイティブが読む新聞やペーパーバックや雑誌などを、辞書を引くこともなく、日本語に訳すこともなく、ネイティブのようにスラスラと読めるということです。また、ネイティブのように、文法のことを一切意識しないのに、自分の表現したい内容を伝えるために、次から次へと語句を紡ぎ合わせることができるということです。

と書かれている。わたしも同感である。

第二に、インフォグラフィックが不足している分野はたくさんある、ということ。ネット業界ではインフォグラフィックが有り余っているが、他の業界ではインフォグラフィックの需給ギャップは大きい。TOEFLの大学入試化は話題になったが、それについてのインフォグラフィックはググってもググっても見当たらなかった。だから、なかこちゃんにわたしは依頼したのだ。

名を揚げたいと目論むデザイナーの皆様は、「Yahooのトップページに載るくらい旬な話題 + インフォグラフィック」でググり、該当が無ければインフォグラフィックをひとつ作って公開してみてはどうだろう。もしあなたがデザイナーでなくても、クラウドワークスランサーズでインフォグラフィック作成を発注することができる。第一のポイントに戻るが、インフォグラフィックを作れば元のデータも見て貰いやすくなるので、一石二鳥である。

おわりに

先ほどのTOEFLの点数の公式データをこちらに再掲しておく。TOEFLのインフォグラフィックはもっと作られるべきだと思うので、我こそがと思うデザイナーの方が続いてくれればわたしが喜びます。

協力してくれたなかこちゃん、ありがとうございました。日本に帰ったらご飯おごるね。

追記(2014/1/30)

インフォグラフィックと呼べるほどのものではないが、東京都知事選のグラフを作ってみたら意外にも反響があった。リツイートされるたび、インフォグラフィックの需給ギャップを感じた。